2001年6月18日(月) 天気 : 晴れ

「科学技術力、海外へのアピール度はいま一つ」「太陽ニュートリノにも質量」

今日は。オフィスに行ってからメイルをチェックしたあと、週末に得た結果をもって Art の所へ行って議論をする。 どういう条件でカットを決めたかとかの説明をして結果を見せた他、誤差の見積もりの方法などを聞いてた。

11時からはミーティング。 自分も新しい結果を持ってたけど、時間がなかったので残念ながら話をする機会はなかった。 そのミーティングが終わったあと、カフェに行こうとしてたら Nu が外に行かないかというので、外に行くことにした。 学校がすでに休みで彼の息子も来てたので、三人で食事に行った。 店がわりと混んでたので、ラボに帰ってきたのは13時50分位。

今日は、13:30から、SNO 実験の結果のセミナーがあったんだけど、それには少し遅れてしまった。 途中からだけど、大まかな話はだいたいわかった。 この結果って、日本の Super Kamiokande 実験と組み合わせて初めて結論にむすびつくんだよな。

セミナーの後、Nuと少し議論したあと、オフィスに戻ってきて、自分のことをしてた。 夕方になってから、使っているコンピュータ群の調子がおかしくなって、そのうち反応が無くなった。 ちょっとして、メイリングリストにそれ関係の情報が流れたけど、基本的に待つしかないので、その間新聞のサイトを見てたら朝日に科学関係の記事が二つのってた。

一つは、「科学技術力、海外へのアピール度はいま一つ」という題がついてて、科学技術白書によると論文数や特許の数は世界で第二位だけど論文の引用度や海外での特許の数や技術輸出額は米英独仏よりも少ないらしい。 評価は文科省・科学技術政策研究所ってところがしたらしいけど、どういう基準で評価されてるのかはよく分からない。 論文の引用度と言っても、小さなグループでやってるような実験なんかなら、著者は日本人だけってこともあるだろうけど、基礎科学、特に素粒子・原子核・宇宙物理関係の実験や理論の論文って一つの国の研究者だけってことは少ないので、その辺は評価してんだろうか?

それと、工学・生物系と違って、特に素粒子・原子核では論文の名前の順番はアルファベット順になってて、論文に貢献した人が一番最初に名前が載るってことはない。 小さな実験でも二桁になるし、大きな実験になると三桁超えるのはあたりまえの世界では、名前の順番で功名心争いをするのは馬鹿げてるので、著者の順はアルファベット順になってる。 ちゃんとその辺とか考慮してるのかなぁ。 役人のすることだからなぁ。(←偏見)

科学技術国家を目指すため、の一つとして、若手研究者の研究費や研究機会を増やす、ってことをあげてるんだけど、今のままではだめ。 研究者の立場から言うと、

  1. 日本育英会の奨学金を、本当の奨学金、つまり返済する必要のないものにする
  2. あるいは、さらに日本学術振興会のポジションを増やす
でまず学生レベルのサポートをするべし。 しかし、これだけでは、博士号をとっても行き先がない人を大量に増やすだけなので、 ということをしないと、学生は大学での研究職を目指しはしないぞ。

もっとも、ここで議論されてるのは世の中にすぐに役立つ科学技術ってニュアンスが感じられるので、その目的だったら、企業に注文がある。 はっきり言って、日本の企業は博士号所有者に対する評価が非常に低い。 アメリカの場合だと、高卒・大卒・修士・博士に対する給料の差が明確にある、もちろん肩書きだけじゃなくて能力も厳しく評価される。 けど、日本の場合は、大卒以上は全部一緒に扱われているような感じを受ける。 育英会の借金を背負ってまで、博士号を取ったにもかかわらず、安い給料だとみもふたもありゃぁしない。 学部、博士課程前期(いわゆる修士)と博士課程後期(いわゆる博士)で全部育英会の奨学金をもらってると、借金は600万円を超える。 いくら無利子で、10数年かけて返せばいいと言われたって、しゃれにならない。

この記事の次にのってたのは、「太陽ニュートリノにも質量」って記事だけど、まさに今日セミナーで聞いた話。 朝日の記事の書き方だと、この実験で初めて太陽からくるニュートリノの数が理論の予想と合わない謎に答えが出たって言ってるけど、そんなことはすでにカミオカンデの結果で答えは出てる。 観測した対象が、大気中で発生したニュートリノか太陽から来たニュートリノかの違いだけで、ニュートリノはニュートリノ。 この実験って、日本のカミオカンデ実験の結果が正しかったことを裏付けた、というのが正しい評価だと思う。

新聞社はイデオロギーがかった論争するばっかりじゃなくて、もっとちゃんとした人を雇えよ。